海のおきへ、遠く遠く出ていきますと、水の色は、いちばん美しいヤグルマソウの花びらのようにまっさおになり、きれいにすきとおったガラスのように、すみきっています。けれども、そのあたりは、とてもとても深いので、どんなに長いいかり綱づなをおろしても、底まで届くようなことはありません。海の底から、水の面おもてまで届くためには、教会の塔とうを、いくつもいくつも、積みかさねなければならないでしょう。そういう深いところに、人魚たちは住んでいるのです。
みなさんは、海の底にはただ白い砂地があるばかりで、ほかにはなんにもない、などと思ってはいけません。そこには、たいへんめずらしい木や、草も生はえているのです。そのくきや葉は、どれもこれもなよなよしています。ですから、水がほんのちょっとでも動くと、まるで生き物のように、ゆらゆらと動くのです。
それから、この陸の上で、鳥が空をとびまわっているように、水の中では、小さなさかなや大きなさかなが、その枝えだのあいだをすいすいとおよいでいます。
この海の底のいちばん深いところに、人魚の王さまのお城があるのです。お城のかべは、サンゴでつくられていて、先のとがった高い窓は、よくすきとおったこはくでできています。それから、たくさんの貝がらがあつまって、屋根になっていますが、その貝がらは、海の水が流れてくるたびに、口をあけたりとじたりしています。その美しいことといったら、たとえようもありません。なにしろ、貝がらの一つ一つに、ピカピカ光る真珠しんじゅがついているのですから。その中の一つだけをとって、女王さまのかんむりにつけても、きっと、りっぱなかざりになるでしょう。
「人魚の姫」ハンス・クリスチャン・アンデルセン/青空文庫
あとがきなどが書けます。